ATLで4台用意されているバックパックPCは、PCを背負うスタイルでVR体験できるので、実際に広い空間内を自由に動き回るVRコンテンツにうってつけです。
12/16に広尾のATLで開催された「ATL SHOWCASE FES 2017」でも、2作品の展示でバックパックPCを使用し、来場者にバックパックPCを実際に体験してもらう機会がありました。
すでにVRにお詳しい方には、バックパックPCのメリットは充分ご理解されていると思いますが、VR展示イベントの運用において、「バックパックPCでのVR展示」か、あるいは一般的な「PCは固定設置して、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)だけを体験者に装着してもらうVR展示」のどちらを選ぶかを検討する時の参考にと思い、バックパックPCのデメリットもリストアップして考えてみました。
メリット
まずはバックパックPCのメリットから。
- ロケーションベースVRに最適
- 複数人プレイのVRコンテンツに最適
- マシンスペックは充分満足
何と言っても1の通り、バックパックPCであれば体験者が自由に動き回れることが最大のメリットです。センサー認識領域の端から端までを自由に移動できます。有線だと運用者も体験者もワイヤーの取り回しを意識してしまうこともあり、体験者が好き勝手動くのに躊躇してしまう気がします。
2も同様に、有線(ワイアード)されている制限がありませんから、ケーブルが絡むことなく同一空間にVR体験者が混在するようなコンテンツに最適です。
3については、ATLで4台提供されているバックパックPCはどれもCorei7-7820HKでグラフィックカードはGeForce GTX10708GB、メモリ32GBなのでVRコンテンツには充分なスペックです。
以上がバックパックPCのメリットだと考えていて、とにかくケーブルから解放されるということがVR体験をすごく向上させます。
デメリット
一方で、来場者に次々にVR体験をしてもらうようなイベントの場合、運用面で以下のデメリットも念頭に置いた方が良いでしょう。
- 背負ってもらう時間がかかる
- HMD以外への映像表示が面倒
- 背負うのが重い
- 連続使用時のバッテリーの心配
1については簡単に想像がつきますが、バックパックPCを背負ってもらう時間が30秒ほど余計にかかります。バックパックPCであるために、体験者がダウンジャケットのような上着を脱ぐ時間も発生することも考慮しておいた方がよいです。
ただ今回のイベントの私の展示に関しては、VR体験後に体験者と作品について話す時間が数分あったので、むしろその時間の運用に課題感がありました。体験者と作者が話をしている間に、別のスタッフが次のお客さんのVRセッティングをしておくという運用2人体制にすることが先決課題だと感じました。
2については、ATLにはバックパックPCに有線で接続する小型モニタが用意されていますので、それを繋げば、バックパックVR体験者が見ている映像をそばにいる運用者も確認することができます。ただこの小型モニタは、VR体験時には外しておかないと体験者の手に持たせたままVR体験することになります。VR体験時に外すということは、運用者からは体験者が何を目にしているかが見えないということになり、VR空間の案内においてちょっと不便だったりします。
外部ディスプレイにVR画面を出力できないというのは、メディア取材してもらったときにも影響があります。メディアさんとしては、体験者の様子と、VR空間の様子を1枚の写真で撮影したいケースが多く、そうなると理想は「HMDを被っている体験者と、VR空間が表示されている外部ディスプレイモニタ(プロジェクタ)」という展示が望ましいわけです。VRでも「インスタ映え」ではありませんが、写真1枚で作品が伝わるような展示が大事だなと感じました。
3については、今回の私の展示ではいらっしゃらなかったので杞憂でしたが、小さい子やお年寄りが体験にいらっしゃった場合を考慮するなら念頭に置いてもいいかと思います。
4は言われてみれば当然ですが、常時AC電源に接続されているPCとは違い、バックパックPCはAC電源コードを抜いた状態で稼働させることが多いので、バッテリー切れの心配があります。今回の展示では、案内の空き時間にこまめにAC電源コードを挿して給電することで5時間のイベントを乗り切りました。もちろんメーカーも考慮されていて、ATLにあるバックパックPCの場合は、バッテリーパックが2個ついており、そのパックを片方ずつ交換することで、電源を落とすことなく運用し続けることができるようになっています。几帳面に電源管理できる人はそれで大丈夫です。
さいごに
こうやって、バックパックPCを使うか使わないかを実際に両方試して検討できるだけでもATLの施設を使う動機になるかと思います。私もATLを知らなければバックパックPCについて考えることもなかったと思います。ATLでは、4台のバックパックPCと、目一杯のVR空間を確保できるスペースが提供されており、ATL客員研究員に登録すれば無料でこれらを使えます。