モーションキャプチャ初体験レポ(2)



前回の導入記事に続き、AdvancedTechnologyLab.のモーションキャプチャ機材(OptiTrack)を使わせてもらった時の注意点や小ネタを書かせていただきます。

モーションキャプチャ用スーツについて

ATLのモーションキャプチャルームの奥側にあるハンガーにモーションキャプチャ用のスーツS,M,L,XL各サイズ、反対の壁側に置いてあるダンボール箱の中に、帽子、グローブ、ソックスが用意されています。箱の中には指先に巻いたり、物に付けたりする予備のマーカーも入っています。マーカーは全てマジックテープ(ベルクロ)で取り付ける方式です。

スーツはタイト目を着よう

S,M,L,XLの4サイズのスーツが用意されています。タイト目を着た方が、マーカーの位置がブレないため、正確なモーションキャプチャができるそうです。

マーカーを付け直そう

OptitrackではMotive上の設定項目で「全身/全身+指少々/上半身だけ/etc..」という風に、撮影する範囲を必要に応じて選ぶことができます。その選んだ項目に応じて、マーカーを付ける箇所も微妙に違ったりします。また、前回の着用者と関節の位置や体のバランス等が全く同じということはありませんし、スーツについているマーカーは毎回つけ直した方が、より正確なキャプチャーができます。画面を見ながら5分あればつけ直せるので、頑張ってつけ直そうと思います。

測定したい部位の範囲に応じて、必要なマーカー数も異なります

正確なマーカーの位置

部屋に置かれた紙のマニュアルファイルにも、マーカーの取り付け位置が図示されていますが、前述の通り、必要なポーズによって付けるマーカーの箇所も変わってくるので、Motive画面上に表示されるマーカー取り付け位置の人体モデルの方で、貼り付け位置を確認しつつ貼り付けるほうがより安心感があります。ディスプレイ上の方がグリグリ回転させてより正確なマーカー取り付け場所がわかりやすいです。

ウィンドウ右のがマーカーの人体モデル、モデル画面の左下数字が現在認識しているマーカー数、右下数字が必要なマーカー数。これを参考にマーカーを貼ろう。右ドラッグでグリグリ回転できます。

マーカーの個数が一致しない場合

例えば「全身&指少々(※)」をキャプチャする場合は49個のマーカーをスーツにつける必要があります。その状態でカメラエリア内でTポーズをとって、Motive上で認識ボタンを押すと、マーカーの集合体を人体として認識してくれるわけですが、Motiveが要求する「人体として認識するために必要なマーカー個数(この場合49個)」は、きちんとその個数を認識させなければならず、その数から多くても少なくてもダメです。
スーツにマーカーをつけすぎていたら取る必要があります。あと、思ったよりもカメラが認識する空間は広いので、机の上や部屋のすみ等に予備のマーカーを置いている時に、それも間違って認識する時があります。その他、マーカーと同じような反射をする物体を誤認識するというケースも一度見たことがあります。
メモ:Motiveの機能として、「この部分に表示されるマーカーは認識を無視する」みたいな機能もあるようですが、それに頼らずマーカーを隠した方が手っ取り早いです。

※5本指全部をキャプチャする設定はOptiTrack(Motive)にはありません。親指&人差指&小指をキャプチャし、その他の指は連動するように補完する設定となります。詳しくは前回記事で。

扇風機を使おう

スーツを着て動いていると、やはり他の人よりも暑いです!部屋に置かれている扇風機を使ってもいいので使わせてもらいましょう!ちなみにスーツは定期的にクリーニングされているそうです。それでもちょっと匂いが気になるときは受付スタッフさんに個別にお願いすることもできます。

まずはマニュアルに従って

モーションキャプチャ機材とそれを運用するためのソフトウェア「Motive」に関する説明は、PC横に置かれたマニュアルファイルに書かれています。ATLのモーションキャプチャ環境専用に作られているマニュアルなので、基本的にはこれに沿って進めていけば大丈夫です。簡潔に書かれているので読むのに時間もかかりません。簡潔すぎて、「○○ボタンを押して〜」のボタンがどれなのかを探すことだけが唯一の難点かと思いました。探せましたけど。

キャリブレーションしたほうが良い

毎回キャリブレーションしなくても、前回の人が設定した状態が残っているので大丈夫そうですが、スタッフさん曰く、施設の天井梁の構造などを考えると、キャプチャカメラに多少のズレが発生することもあり得るので、より正確さを求めるなら毎回キャリブレーションした方がよいそうです。やり方はマニュアルに記載されています。ダンボールの中に空間キャリブレーション用の棒、PCの机の上に床キャリブレーション用の三角マーカーがあるので、それらを使ってMotive上でキャリブレーションしましょう。数分でできます。

床の水平を計測するための三角器は、机の上の箱の中にあります

空間を測定するバーはハンガー裏の着替えスペースに置かれている(ことが多い)
(2021.11.1現在 専用の壁掛けスペースに設置するようにしています)

同伴者の登録について

モーションキャプチャは一人でもできないことはないですが、Motiveソフトウェアの操作と、スーツを着て動くキャプチャモデルの2人体制だと捗ります。あるいはキャプチャモデルとしてダンサー等のパフォーマーさんを連れてきたいこともあると思います。
ただしATLはATL客員研究員登録した人でないと利用できないルールなので、こっそり知人を連れ込むのはNGです。必ず全員が事前にWebから利用登録を済ませた上でご来館ください。

スライド戸を閉めてもOK

(※2021.11.1現在 スライド戸ではなく普通の扉のついた部屋になっています)
何か音源に合わせてモーションキャプチャすることがあると思います。(ATLに専用のスピーカーはないので自分のスマホ等で音楽は流しましょう)
ATL施設はオフィスも併設されている静かな空間なので、そういう場合はモーションキャプチャルームのスライドドアを閉めることで、多少の音漏れを防げますので利用しましょう。
私の場合、知人がモーションキャプチャスーツを着て動いているのを見るとついつい冗談を言って盛り上がってしまうので閉めるようにしています。

データの書き出し形式

Motiveで撮影したキャプチャデータは、いろいろな形式で書き出すことができます。その中でも.fbx(BINARY)形式は割と主流らしく、Motiveの書き出しウィンドウのデフォルトの書き出し形式も、おそらく.fbx(BINARY)形式になっていると思います。
私の場合、UnityやCINEMA4Dでデータを利用したかったのですが、.fbx(BINARY)形式で書き出したデータを使って無事に利用できました。Motiveには、同じfbxでも.fbx(ASCII)形式書き出しというフォーマットもあって、これだと後々面倒だったので、私の用途においては間違って選ばないように注意しています。
Motiveでは他にも、3Dソフトのblender用に最適な.bhd形式や、Web系で取り回しやすそうな.csv形式などなど、いろいろな書き出しフォーマットが用意されているので、皆さんの使用ソフトに応じて必要なフォーマットを選べるかと思います。

Motiveで後から編集できる

撮影を通じて、例えば一瞬だけ手のひらが裏返ってしまうようなキャプチャエラーが発生してしまうかもしれません。もしそういう場合でも、モーション録画後にMotive上で各部位の動きをグラフ編集することもできます。幸い私はそういう症状にはまだ出くわしてませんので、編集作業の手間具合は分かりかねますが、一応最後の砦としてそういうテクニックも残されていることを覚えておきます。

電源を抜いて帰ろう

そうマニュアルに書いてあるので、2箇所あるAC電源の大元を抜いてから帰りましょう。うち1箇所(PCが繋がっている方)にはまとめて電源をオフにできる電源タップがあるので、それをオフにしておけばいいと思います。もう片方(天井カメラだけが接続されている側)の電源は壁のソケットを抜きます。
電源の起動&終了に関しては順番があって、
・開始時:天井カメラ全てがON(青LED点灯)になっているのを確認してから、PCを起動、Motiveソフトウェアを起動
・終了時:Motiveを終了、PCをシャットダウンしてから、PCおよび天井カメラのAC電源(2箇所)を抜き、カメラの消灯を確認
守らないとどうなるかは知りませんが、なにせ高価な機材なので、この教えに従うと安心です。

何かあったらOptitrackさんに相談しよう

前回の記事にも書きましたが、このようにOptiTrack社の技術サポートさんに気軽に電話相談できるのはATL施設の大きなメリットだと感じました。とても助かります。そもそもモーションキャプチャ機材が使えること自体すごいのですが。

使い方ビデオも追加されたそうです

私はまだ見てないのですが、ATLで開催されたOptiTrack勉強会のビデオが見られます。OptiTrack社の中の人が、ATL施設に設置導入された機材に沿って説明をしてくれているので、ネット上の汎用的な解説ビデオにはない、より特化した情報が得られるかと思います。

それでは素敵なモーションキャプチャライフを!